大佐渡山脈縦走
5月上旬、佐渡の山を歩いてきました。
(こんなシラネアオイも見られました)
昨年はコロナで対応も対策もまだまだ見えていない状況だったため残念ながら中止となった佐渡行き。
今回は感染対策も十分にとれる見込みとなり開催致しました。
おけさ丸で2年ぶりの佐渡上陸です。
このタイルを見ると「佐渡に来たなぁ~」という気持ちになります。
お出迎えありがとうございます。
笠のリボン型の紐が佐渡のおけさ笠の特徴。
ガイドは明日からなので、今日はバスで野城というところにやってきました。野城にあるのは…
これです!姫埼灯台キャンプ場。ネットで見てここで泊まってみたいと前から思っていたテント場。
早朝5時台に塩尻を出て、寄り道せずに来ましたがもう陽が傾いています…。
大佐渡山脈と田んぼと海と空!佐渡に来たなぁ~。
バス停から歩いて10分ほどでキャンプ場に到着です。この芝生!
このロケーション!そして無料!
更には誰もいません、平日最高。
テント場のすぐそばに姫埼灯台。現存する鉄製灯台では日本最古、そして現役。
1895年から稼働とのことなので、今年で126年目!
ベーブルース、芹沢銈介、バックミンスターフラーと同級生です。
「世界各国の歴史的に特に重要な灯台百選」に選ばれています。
灯台のすぐそばにこちらもレトロな趣きの建物。昔の灯台職員の庁舎・宿舎を模して造られた灯台に関する資料館のようですが、この日はすでに閉館。
灯台付近から見た大佐渡山脈。どんな花天国が待っているのか、明日からが楽しみです。
ペグの入りもスムーズでチャチャッと張れます。せっかくの芝生なんでマットは未使用。
寝袋は新規で導入したmont-bellのシームレスダウンハガー800をお試し。
海の見えるテント場は伊豆大島のトウシキキャンプ場以来でしょうか。
ポールも寝袋と一緒にカートに放り込んだU.L.フォールディングポール120。シンプルさと軽さが◎。
ストラップとかを取り去って更にシンプルに軽くしようか迷い中。
もう一個mont-bell製品。スタックイン野箸!
先端部分が天然木の縞黒檀ってとこに惹かれてこちらも寝袋と一緒にカートに放り込みました。オンラインショップって怖いですね。
緑の部分はアルミ合金ですが黒い部分は天然木。
普段はチタンのスプーンとフォークで事足りるので箸は持たないのですが、この日は両津のスーパーの総菜を夕食に…と考えていたので箸がいいかなと。
15gなんで今後も装備に忍ばせておこうと思います。
で、朝です。夜はまさかの雷と雨でした。でも5時頃には収まって充実の2度寝、いただきました。
お客さんとの合流は昼に両津ですので、急ぐ必要はありません。
この後バスで両津に戻り、両津港でお客さんと合流。
ドンデンライナーでアオネバ渓谷登山口まで移動しました。
一日目
やってきましたアオネバ渓谷。
天気も上々です。
歩きはじめるとまずはオオイワカガミがお祭り状態でお出迎え。
この前半部分がオオイワカガミのピークでした。
緑の萼が鮮やかなルイヨウボタン。きれいに6-6-6で揃った萼と花弁と雄蕊。
ニリンソウはもうずーっと延々と続いて数も多く、ですので…
こんな個体も見られました。
もっと緑なこんなのも。
オオタチツボスミレ、ニリンソウ、アオキの実がそれぞれ紫、白、赤で登山道を彩ります。
沢を渡る「落合」付近でヤマトグサを発見。
この植物の発見当時はまだ日本人により学名がつけられたという前例はなく、この花はトガクシショウマに続いて日本人によって学名が与えられた2例目の植物となりました。
そこで発見者の牧野富太郎氏によって日本(大和)を代表する種だとして「大和草」という和名がつけられました。
くるりと巻いた外花被片から雄蕊の先の黄色い部分(葯)の先端まで約1cm。
なんだか不思議な繊細極まりない花です。
落合からしばらく登ると、いよいよ出てきました。
アオネバと言えばこれ、佐渡と言えばこれ。シラネアオイです。
点在して途切れることはないのですが、ところどころ夢のような群落があって驚かされます。
本州の山で1株見つけて驚いていたのはいったい何だったんだろうか?と思わせるのが佐渡の山です。
このような色の濃い個体もありました。
あちこちの山で個体数が減っている花ですがおそらくここのシラネアオイは日本一の個体数だと思います。
伝わり辛いと思いますが、やや濃い色の草の部分全てにニリンソウが咲いています。
登り坂の見上げでこれだけ群落されると圧巻です。
跨ぐ沢もこの美しさ。
アオネバ渓谷を堪能し、ドンデンまで上がってきました。せっかくなので山荘に直行せずにドンデン池と尻立山を経由して山荘に向かいます。
今日のお宿はドンデン高原ロッジ。個人ガイドではドンデンでのテント泊、ツアーガイドの時は下のホテル泊まりでしたので、実はここに泊まるのははじめてでした。
支配人さん曰く「今日がピークかなー」とのこと。それなりにお客さんは来ていましたが、グループ毎に部屋は貸し切りになるので全体数は知れています。
「佐渡はこの時期だけでは無い」と言う魅力発信をこれからされていくとのことでした。
そうですよね、こんな時代ですからいまはそういう変革が誰にとっても(個人にも企業にも)必要ですよね。
快適な一晩と美味しい食事をありがとうございました!
二日目
朝から風と雨。もう少しマシな天気かなと読んでいましたが、さすがは島の山。あまくありません。
今日の下山は白雲台。そこからの両津行バス(金北山ライナー)の発車時刻が16:55と遅めなので、そのゆとりを使ってちょっと山荘で待機。
回復傾向の日はそういう判断も登山の快適さを左右するので、細かな計画を立てておくと柔軟かつ迅速に対応できます。
楽しみにきているわけで「計画通り」がいつも正しいわけではありません。
風はちょっと残っているけど、雨はもう降らなそうな感じになったので出発します。
今日のスタートの花はヒトリシズカ。花弁も萼片も無いストリップフラワー(裸花)です。
濃い色の葉に純白の花糸がよく目立ちます。
今日はどれだけその姿を見せてくれるのか。シラネアオイ。
ドンデンから大佐渡山脈縦走の最初のピーク、マトネまできました。ここから大佐渡山脈の最高峰・金北山が見え…
ませんでした。流れてはいますが、まだまだ雲多めです。
しかし、こんな日でも足元の花は良く見えます。
こちらはニシキゴロモ。似た仲間のキランソウも見られました。
シソ科キランソウ属の仲間です。
スミレはところどころオオタチツボスミレが群落していましたが、こちらは群落せず、小さい小さい花をつけるマキノスミレ。
砂地と芝生の境目、下からえぐられているところが強風地帯の証、風による窪、その名も風食ノッチです。
風が山をえぐり取っていく様子が想像できます。このようにしてどんどん裸地化が進んでいくんですね。
いったいどのぐらいの速度で風食が進むのだろう?と気になって調べたところ、佐渡ではありませんが2年間で13cmという驚きの論文がありました。
雪解けを告げるスプリングエフェメラル、ショウジョウバカマが現れました。まだ咲きたてという新鮮さ。
こうして春の花から初夏の花までが一度にあれこれ見られるのは雪の多い山ならではの魅力です。
おなじくスプリングエフェメラルのカタクリが登山道脇を詰めつくします。
佐渡のカタクリはこのように葉っぱに斑が入っていないのが特徴です。
おそらくこの日だけで数千株(数万株?)のカタクリを見たと思うのですが、ひとつとして斑の入ったものがありませんでした。
満を持してオオミスミソウのご登場。
これもいい色ですね。
萼片のだけじゃなく花糸や葯の色まで様々に変化して多彩な姿を見せてくれます。
だんだんと天気も回復してきて、金北山までの稜線が見通せました。しかしながら風がなかなか収まらず…
強風のところ(風の通り道)は裸地化しているので、風の強いところが可視化されています。
下の方に目をやると、両津の街が見えています。湖と海は加茂湖と両津湾ですね。
加茂湖は新潟県最大の湖(汽水湖)で、牡蠣の養殖が行われています。奥は小佐渡丘陵。
佐渡では5月もまだまだ桜の季節です。
このオオヤマザクラ、田中澄江さんが金北山で選んだ花と何かで見聞きしていましたが、どんな文かなと帰ってきて「花の百名山」と「新・花の百名山」をチェックするも、どこにもそんな記述は全くなし。はて?
ちなみに「新・花の百名山」には金北山が載っていて、イワカガミが挙げられていました。はて?
そんなのはどうでもよくて遠目で見ても近くでみてもとてもキレイな花でした。
カタクリがあればこれもあるよね、キクザキイチゲ。
さぁだんだんと金北山が近づいてきました。
冬芽のウサギ状態から進化したオオカメノキ。第二形態という感じでしょうか。
既に開花している花も多くありました。逆にウサギ状態も。
進化の過程が辿れます。
金北山の直下のあやめ池に到着。
雪解けのこの時期は登山道まで水が溢れてます。
ここをカキツバタが飾る時期は7月上旬とのこと、その頃にも来てみようかな。
金北山への最後の一登りは雪の壁!
というほど急じゃありませんが、雪を踏んで登っていきます。
地元の方々によってステップが切ってあり、おまけにロープまで設置されているので安心して登れます。
金北山に到着!
強風に苦しめられたところもありましたが、無事到着できました。
ここに着くと実質登山は終了。
ここからは防衛相管理道路を進むので舗装路歩きとなります。
クールダウンにちょうどいい道という感じでしょうか。
山腹を巻きながらたくさん建物がある山の更に奥まで行くと今日のゴール白雲台です。
管理道路の途中に素晴らしいブナ林があります。山側を見上げるとでっかいブナが根曲がってます。雪のパワーを感じます。
金北山から約1時間ちょっと歩くと白雲台に到着しました。名前の通り白い雲に覆われてきました。
これで大佐渡山脈縦走は終了です、お疲れ様でした!!
風が冷たくて寒いので交流センター 白雲台の中でバスを待たせていただきます。
食堂とお土産屋さんが入ってます。トイレもあります。
今回の成果品はこちら。
交流センター白雲台で
一昨年一緒に大佐渡山脈縦走をガイドした佐渡山歩ガイドクラブの塚本さん(塚本こうじ屋)の作る山椒味噌と、URASHIMAさんの佐渡みかんマーマレードを購入。
それから帰りのフェリー乗り場の売店で
(でも夕方の佐渡から塩尻までは一日では着かないので新潟駅前で一泊…)
佐渡はやっぱりすごかった!
でもそのすごさ、写真では伝わらないんだよなーとか思いながら写真を撮ってこうしてアップしましたが、まぁ伝わらないんですね。
全然(写真の能力と文章の能力も相まって)。
とにかくこの魅力は「行かないことにはなかなか分からない」ということにしておきましょう。
ですので是非佐渡に!
今月下旬に大佐渡山脈縦走+北部の大野亀のトビシマカンゾウの大群落(当webサイトのトップページの黄色い花の写真がそれです)なんていうのもいいかも知れません。その時期も大佐渡山脈では雪解けの遅いところでシラネアオイやカタクリが見れたりします。
あやめ池のカキツバタの時期はまた違った魅力がありそうですし、紅葉の時期も良さそうですね。
その辺りはこれからこの目で見て、足で歩いて魅力を見つけこれから発信することができればと思います。
とにかく!この5月の佐渡は間違いなくおすすめですので、今後も企画して佐渡の山歩きの素晴らしさを広めることにちょっとでも貢献できればいいなと思っています。
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