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雲ノ平-2

雲ノ平-2

槍と雲
槍と雲
9月初旬の雲ノ平。台風の影響で強い風が吹く中、水晶岳、鷲羽岳をパスして黒部乗越にたどり着きました。
今日は美しい黒部五郎カールを進み黒部五郎岳山頂を目指します。
 
day4
早朝の空
早朝の空

夜も明けきらないうちに出発です。

 

昨日よりだいぶおさまりましたが、まだまだ上空は早いスピードで雲が流れています。

あまり動かない高い雲と物凄いスピードの低い雲の二重構造と言った感じです。

雲の切れ間からスポットライト
雲の切れ間からスポットライト

黒部五郎岳の一部にスポット的に陽が差し込みます。

 

このスポットが消えては別の場所に出てを何度も繰り返し、晴天では見られない変化のある不思議な光景でした。

黒部五郎カール
黒部五郎カール

カール内を徐々に詰めて"縁"が見えてきました。

結局ガスが多い!

イワイチョウ黄葉
イワイチョウ黄葉

カール内で見かけたイワイチョウは夏から秋へ移行中。

カールに光差す
カールに光差す

他のカール同様に当然ここでも最後は急傾斜で縁に登ります。

 

急な登りで振り返ると薄明光線が。よく「天使の階段」などと表現されます。

他に「ヤコブの梯子」や、開高健が好んで使った言葉「レンブラント光線」なんていう表現も。

黒部五郎岳山頂
黒部五郎岳山頂

今日は台風が朝鮮半島辺りまで抜けて西風が強い日ですので、カールの縁に立つとそれなりに風を受けました。

 

幸いにもよろけるほどでもなく難なく山頂まで到達しました。

ただし…展望はゼロ。

不動明王像
不動明王像

山頂には不動明王像。

自然による災害と恩恵、破壊と恵みの相反するものを与える仏です。

 

恩恵は計り知れないが時に大きな災害も起こす山。

不動明王と同じような存在なのかも知れません。

双六小屋
双六小屋

黒部五郎岳から下山し、三俣蓮華岳、双六岳と進み双六小屋に到着です。

この間なぜか全然写真が無かった…。ほとんどガスガスでした。

 

 双六小屋の看板は『花の百名山』『新・花の百名山』を著した田中澄江さんの筆。

day5

双六小屋の日の出
双六小屋の日の出

さぁ!最終日。

今日は双六小屋から鏡平を経て新穂高温泉に下山です。

 

朝の双六小屋前からは唐沢岳、餓鬼岳、燕岳などが良く見えます。

鷲羽岳
鷲羽岳

鷲羽岳も初めてはっきりと全貌を望めました。

快晴の双六小屋
快晴の双六小屋

快晴!出発です。

オオヒョウタンボクの実
オオヒョウタンボクの実

完全に瓢箪型のオオヒョウタンボクの実。

双六小屋と鷲羽岳
双六小屋と鷲羽岳

双六小屋と鷲羽岳、水晶岳も奥に見えています。

 

鷲羽を目指して新穂高からここに来たらこの景色にテンション上がるでしょうね。本当に立派な山です。

槍穂高連峰
槍穂高連峰

少し進んで尾根の東側に出ると槍穂高がドカンと見えました。

槍の穂先が見えたのも最終日にして初。

白山
白山

くろゆりベンチからは日本一のクロユリの山が見えました。

 

ウラジロナナカマドの実
ウラジロナナカマドの実

ウラジロナナカマドの実も朝日を浴びてオレンジ色。

笠ヶ岳
笠ヶ岳

弓折~大ノマ~抜戸を経て笠ヶ岳までの稜線もよく見えてます。

ミヤマトリカブト
ミヤマトリカブト

全草に毒を持つトリカブト。僅かな量でも食べればあっという間に死に到るそうです。

アイヌの人々はこれを毒矢に用いてヒグマやシカの狩猟をしました。

 

よく観察するととてもキレイな花ですが、あまり触れない方がよさそうですね。

鏡平山荘
鏡平山荘

 

鏡平山荘は営業しつつ建物の一部建て替えを行っていました。

鏡池と槍ヶ岳
鏡池と槍ヶ岳

鏡池に着く頃には早くも空はどんより。

いままでここで晴れていた例がありません…。

 

ここから小池新道を下っていきます。

カメバヒキオコシ
カメバヒキオコシ

道端に倒れていた修験者に弘法大師・空海がこの葉を絞って汁を飲ませたら、みるみる回復して起き上がったというのでヒキオコシ。

カメバは噛めばじゃなくて、亀葉です。亀のような葉。

 

秋の花ですね。

サラシナショウマ
サラシナショウマ

これもどちらかというと秋の花サラシナショウマ。

 

○○ショウマはみんなこれの葉に似ているという意味で付いていますので、元祖ショウマ。

 

ショウマというのは升麻という生薬の名でこの花の根を乾かしたもののことを言います。

ちなみに市場に出回る升麻のほとんどは中国や朝鮮半島産のものらしいです。

 

見ての通りよく虫が集まってます。

秩父沢
秩父沢

秩父沢まで来ました。

 

去年も一昨年もここの増水を恐れて計画変更、長時間行動を余儀無くされました。

 

今日は…

秩父沢の橋
秩父沢の橋

一滴も水がない!

 

渡れないほどの増水を見たことはありませんが、良く雨の後に「渡れなくなるから早めに降りた方がいい」という情報は耳にします。

 

もしここを渡れなかったら…

鏡平まで引き返して、抜戸岳まで登って笠新道を下山?などと思うとぞっとします。

ヒロハツリバナの実
ヒロハツリバナの実

顕著な4つの翼をもつヒロハツリバナ。

 

乾燥すると裂けて種子を散布するこのような果実のタイプを蒴果(さくか)といいます。

これと違って上向きですがユリも蒴果ですね、ニッコウキスゲとか。

 

蒴果が写真のように平たくて4翼(=4裂)のものはこのヒロハツリバナです。

似ているツリバナやオオツリバナは5裂でクロツリバナは3翼(=3裂)。

マユミは4裂ですが翼というほど尖ってなく丸みがあります。

小池新道入口
小池新道入口

 

小池新道の入り口まで降りてきました。

ここまで来ると舗装路と砂利道が交互に出てくる林道です。

ほぼ下山といっても差し支えないところ。ただし車は呼べません。

 

新穂高温泉までは約1時間半の道のり。

途中の山側斜面は広範囲に風穴となっていて涼しい風が漂ってきます…が、今年は群発地震でかなりの落石が林道にも落ちており、山側に寄ることにリスクがあります。

 

新穂高に近づくとしっかり組まれた石垣が崩壊していたり、いまにも崩れそうに膨らんでいたり…。

この地震は、山は、今後どうなっていくのでしょうか?

 

そんなことで最後に少し落ちこんだ気分になりましたが無事に新穂高温泉に下山しました!


このところ毎年一度は訪れている雲ノ平周辺のこの山域。今年は無理かなと思っていましたがこうしてまた来ることができました。

4泊5日と長い行程でしたが終わってみるとあっという間。

台風の影響で計画の全てはこなせませんでしたし、それほど良い天気や展望にも恵まれませんでしたが、わりと山の中ってこんなもん。

 

予定通りにこなす!とか絶対に登頂する!!

なんていう想いは、自然の前では時として蟻が「像を倒す!」と言っているのと変わりのないほど愚かな想いとなります。

(逆にそんな気持ちの強さが必要な場面もあるとは思いますが…)

 

そんなことよりも、じゃあこの中で安全に動くにはどうするか?何に期待しどこを楽しめるか?何を学べるか?

という冷静に現状を捉え、謙虚かつ広く大きな心で自然に接することの方がよっぽど重要だと思っています。

その分、たまの好天や雲一つ無い大展望を稀な恩恵として、しっかり受け取るというのが山や自然との正しい付き合いかたなのではないでしょうか。

と、なぜか突然語りに入っちゃいましたが…

 

来期はこの素晴らしい山域で皆さんに興味を持っていただけるような募集企画を作れればと思っています。