雨と風に阻まれた花の白山
day1
7月下旬、テント泊1泊2日で加賀の名峰白山へ。
7月中旬に募集をかけていた白山はこの度の新型コロナウイルスで山小屋の対応が大きく変わってしまい泣く泣く中止に。
今回はテント泊に慣れているお客さんと、これまた別の山から急遽変更しての白山行きとなりました。
今年は白山を取り巻く公共交通機関の状況もがらっと変わってしまい、金沢駅からの登山バスは出ていません。
3駅隣の松任駅から、しかも朝6:30の一便のみ…。
当然首都圏から朝出発してそれに乗ることは不可能です。
ということで今回は金沢駅からレンタカーで市ノ瀬に入り、シャトルバスで別当出合へ向かうことになりました。
市ノ瀬ではたくさん車がありましたが、シャトルバスは貸し切りでした。バスには係の人に検温をしてもらってから乗車します。
別当出合に着くとは登山者はほぼゼロ。
休憩所で身支度を整えて、雨が降りそうな降らなそうな天気の中、別当出合をスタート!
鳥居をくぐり大きな吊り橋を渡ります。
橋を渡るとウバユリが立て続けに現れます。
ウバユリは花が咲くときには葉がボロボロになります。
葉が無い→歯が無い→老女=姥
というつまらないダジャレが名前の由来です。
一時間ほど登り中飯場(なかはんば)にたどり着くとセンジュガンピが。
センジュは花弁の先の形が千手観音の手のようだから。
ガンピは似ている岩菲(がんぴ)という花から。
緑の中にパッと映えるシモツケソウです。
シモツケというそっくりな花がありそちらは木本、つまり木です。
で、シモツケソウは草本、草なのでシモツケ"ソウ"とソウがつきます。
シモツケは漢字で書くと下野。栃木県ではじめに見つかったんでしょうか。
ヨツバヒヨドリも咲いていました。
頻度が多いので名前はみなさんよく知っていますが、四葉じゃないから違うということが言われがち。
全然三つ葉も五つ葉もありますのでそれらもヨツバヒヨドリでOKです。
更にヒヨドリ?あのピーピー鳴くひよどり?どこが?と思われますが、あの鳥は関係ありません。
枯れた花や葉が良く燃えるので着火剤になり「火を取る」。
それが訛りに訛っていつしか「ヒヨドリ」となりました。
ヨツバヒヨドリは、"主に"4つ葉で枯れるとよく火を取る
そういう花です。
甚之助避難小屋まで登ってきましたので、小屋で休憩。
中に入ると…
バババババッバババババッ!!!!と屋根を叩く音。
豪雨襲来です。
これはしばらく小屋で待機です。たまたま小屋に入っていて良かった。
少し弱くなったので再出発。
ガスガスですが、ここからが花の本番です。
イブキトラノオ、オタカラコウ、クルマユリ、ヨツバシオガマ、ニッコウキスゲ、ハクサンフウロ、ミヤマシシウド、テガタチドリなど続々と。
その後も雨が降ったり止んだり。そんな中を南竜ヶ馬場へと歩みを進めます。
例年あるテント場への道の残雪は一切なくなっていました。
その融けた場所にはハクサンコザクラが。雨でへにゃへにゃ。
イワカガミやアオノツガザクラやクロユリもありました。
テント場に着く頃に雨も風も強くなってきました。
屋根のある水場兼自炊場?の建物があるので、一度そこに避難。天気の波を見つつテント道具だけを持っていき、ここという場所にババッと張ります。
今日は風雨のテント泊。
day2
夜はうるさいほどの雨でした。
朝にはだいぶ弱まってくれましたが風がとても強く、快適な花登山は望むべくもなく…
ここより上部はもっと厳しい状況と思うと予定通りの登山は難しい。
今回はここから往路をたどって下山することにしました…。残念。
昨日と同じ道を甚之助、中飯場、別当出合とゆっくり下ります。
無事に別当出合まで下山して、シャトルバスで市ノ瀬へ。
濡れた装備を解除して車で金沢方面へ向かいます。
途中お客さんの要望で白山比咩神社に立ち寄ることに。
日本全国に2700社あると言われる白山神社の総本社です。
トップの写真がその参道、良い雰囲気です。
境内には霊峰白山の説明板が、なんとその横に…
遥拝所がありました。
遥拝というのは奥宮(白山の山頂)に登れない人の為に遠くからでもその場所を拝んだことになるといった趣旨のもの。
つまり!ここで拝めば登ったことになると言っても過言ではありません。
というちょっとインチキなフォローが期せずしてできました。
来年是非リベンジしましょう!
山の天気は難しいとは言えかなり残念な結果となりました。
この時期に何度も白山を訪れていて、歩行が厳しいほどの悪天候に捕まったのは初めてでした。
急遽とは言え代替案としてここを選んだ自分自身に少しショックを受けました。
なんで白山に花が豊富なのか?多量の積雪と日本海から直で受ける強風。
雪田と風衝地があって生まれる豊富な高山植物。そんな当たり前のことは頭では分かっていたのですが…
いつも穏やかでただただ美しい花を咲かせてくれる優しい山という印象しか持っていなかった。
いままでの好天はたまたまだったに過ぎません。
それなのに多少悪い予報でも「白山は大丈夫」という根拠のない期待のようなものが頭のどこかにあったのかも知れません。
これからもこの山はガイドし続けたい山のひとつです。
厳しい面も知って、ますます魅力を感じました。
今回の山行は白山でより良いガイドをするための重要な1ピースにしていかなければいけないと肝に銘じた山旅でした。