梅雨空の御嶽山
7月の中旬。
まだまだ梅雨真っ只中ではありましたが、前泊+1泊2日で御嶽山に行ってきました。
ガイド開始日の一日前に現地入りして二の池ヒュッテに一泊。
翌日お客さんと合流しガイド開始。
その日は剣ヶ峰を踏んで二の池ヒュッテに宿泊、翌日は継子岳、摩利支天山といった御嶽山の北側の山々を巡って二の池ヒュッテに戻り、ロープウェイへ下山、解散。
そのような行程の3日間です。
day1
タイミングよく二の池ヒュッテのゆりさんが街に降りてるということで、木曽福島から御岳ロープウェイまで車に乗せてもらっちゃいました。
昨年の9月以来、約一年ぶりの再会です。
今年の小屋の経営は決断決断で大変そう。「いまやれることをやる」という姿勢に勇気をもらえます。
ロープウェイから小屋も一緒に歩かせていただきました。
軽い?荷揚げもあったようでまぁまぁ背負っていますが、さすが。素晴らしいペースでサクサクと登っています。
でもこの日は蒸して暑かった!
途中途中の小屋の方々にお茶をいただいたり、ご挨拶をしたりしつつ進むとさくっと二の池ヒュッテに到着。
ガイド装備を降ろして身軽になって、今日は花の咲き具合をチェックがてら散歩に出発です。
5羽のカラー雷鳥に見送られ出発です。
賽の河原を抜けて、三ノ池方面を目指します。
賽の河原を抜けて登りに差し掛かるとイワツメクサやミヤマダイコンソウなどの風に強いタイプの高山植物が出てきました。
岩の隙間にはイワウメです。
賽の河原を抜けて摩利支天乗越を越えると眼下に五の池小屋が見え、小屋に近づくと右手下に深い青色の三ノ池が見えてきました。
噴火口であることが分かる形です。
五ノ池からは時計回りで継子岳を周回します。
五の池小屋のすぐ裏手の飛騨頂上を越すとコマクサの群生地…
ガスガスでコマクサが見えないな…と思いきや全然コマクサが咲いていませんでした!!
うーん?このところ全然日差しが無いためか開花が進んでいない?最盛期より少し早いのは分かってはいるんだけど…
とかなんとか考えながら歩いていたら雷鳥発見!
一応ズームで撮影。
コケモモは花盛り。たくさん咲いていました。
右手の下方に今度は四ノ池が見えました。
四ノ池は水を湛えておらず、小川の流れる湿地のような感じです。
でも他の池と同様に火口であることには変わりありません。
足元にはチングルマや…
ミネズオウといった小さな花々が咲いています。
針の山に到着。荒々しい独特の景観です。
どんどんと雲が沸いては流れ、基本的に視界は近距離でしたが、一瞬雲の奥の奥に乗鞍岳が見えました!
継子岳の手前ではコマクサが…かろうじて咲いていました。
う~ん。残念。
継子岳に到着。広い山頂です。
少し展望も期待しましたが、どうも雲が切れそうもなく継子岳を早々に後にしました。
少し下ると高天原という表示と共に、石積みに囲われた中に鳥居と石で作られた御幣がありました。
この「高天原」という言葉、登山をしているとよく現れる場所ですね。
読みとしては「たかまがはら」が一般的です。で、一体なんなのか?
高天原は古事記の中で「神々が生まれ」、「多くの神々の住まう処」とされています。
場所についてもいろいろと説はあるようですが、高天原は天上の世界というのがわりと一般的なようです。
高天原を後にして継子二峰を越えると道は岩場になりました。
慎重に岩場を下りきるとさきほど上から見えていた四ノ池に到着です。
高層湿原の様相の四ノ池。周囲とはまた違った花が咲いているようでしたが、今年は雪解けが早かった影響かあまり目立つほど花が見られませんでした。
モミジカラマツは多く見られました。
四ノ池から三ノ池の火口縁に上がる途中ではハクサンシャクナゲが。
三ノ池の火口縁に上がると眼前に摩利支天乗越が。
三ノ池いい色してます。
池のほとりまで下りてきました。
三ノ池の水は御嶽教では御神水とされている水です。
池自体は御嶽山最大の湖で水深も13.3mと最も深くなっています。
ちなみに二ノ池は日本最高所の湖です。
池の南側は開田頂上。開田高原から登るとここが山頂エリアへの合流点になります。すぐそばに三ノ池避難小屋もあります。
この周辺にはたくさんの花が咲いていました。
これはウラジロナナカマドの花。
ミツバオウレン。
白は萼片で黄色いところが花弁。ややこしいですね。
アオノツガザクラ。
うっすらと青っぽいツガザクラ。
時期的に花は終わりかけですがコイワカガミもまだたくさん。
雪解けのタイミングのせいでしょう。
ミヤマキンバイも群落を作っています。
こんな感じのミニ花畑がたくさんあります。
賽の河原方面に少しあがるとまたちょっと植生が変化。
オオヒョウタンボク。
秋に瓢箪型の実が成ります、毒です。
こちらは「タカネ」ナナカマド。
花の趣はウラジロナナカマドと全然違いますね。
ちなみに「ウラジロ」だけでなくタカネナナカマドも葉の裏は白いです。
地味ですがヤマガラシとか…
クロクモソウなども咲いていました。
せっせと登っているとまた一瞬雲が切れました。
来た方向を振り返ると三ノ池と継子岳。
岩っぽいところにはツガザクラもひっそりと咲いています。
賽の河原まで戻ると二の池ヒュッテの案内が現れました。
相変わらずガスガス。でもここはこの方が雰囲気出ます。
ここが賽の河原(さいのかわら)です。
ケルンのような石積みがたくさんありますが、ケルンは山では登山道を示す目印とされていることが多いと思います、中には慰霊の意味を持つケルンもあるようですが、ここのこれはやや意味が異なります。
賽の河原はいわゆる「地獄」の一場面。
三途の川の河原です。
親に先立って亡くなった小さな子供は父母供養のためにここで石の塔を作ろうと石を積みますが…積んでも積んでも鬼が現れて石の塔を崩してしまいます。
それでも延々と石積みは続きます。そんな地獄です。
そんな子供を救うのは写真にも写っている地蔵菩薩。
"賽の河原"も登山をしているとたまに目にする言葉ですね。
広く荒涼とした場所なんかがよくそう呼ばれています。
二の池ヒュッテへ戻りました。
この日の宿泊者は旅行会社の団体以外は自分とソロの男性一名のみ。
明日の天気が気になります…
day2
朝から雨…少しでも良くなってくれないかなとの希望は天に届かず。
お客さんと合流するためロープウェイへ。
ロープウェイの飯森高原駅でお客さんと合流し、簡単に打ち合わせ。
明日の方が予報はマシなので、今日は山頂をパスして直接二の池ヒュッテへ向かうことに決定です。
どしゃどしゃ降っていた雨も少し弱まってきたので、特に苦労なくヒュッテに到着しました。
途中立ち寄る山小屋ではお茶を出してくれます。ありがたいです。
雨に濡れた装備を処理して、着替えて。
お客さんとストーブを囲んでいろいろ話をしていると、あっという間に夕食の時間です。
連泊なのでメニューを変えてくださいました!
夕食後は再度ストーブを囲み、お客さんと他の登山者の方も交えて山の話で盛り上がりました。ちゃんとマスクをしながら。
標高が3,000mに迫る場所で外は雨が降り続いていましたが、そんなことがすっかり忘れるほど小屋で過ごす時間は快適そのものです。
day3
なんとか雨は止み、朝食前に剣ヶ峰を往復です。
5時ちょうどに山頂に着きました。
とにかく霧が濃くて当然のごとく展望はゼロ…。
2014年噴火で最も火山灰の堆積が多かった八丁ダルミなどもこの日は見えず。
山頂直下の2014年の噴火の慰霊碑や新たに設置されたシェルターなどが噴火の記憶を風化させまいと佇んでいます。
ここ最近は悲惨な事件事故、自然災害が多く上書きされてしまうためかとにかく物事の風化が早いと感じます。
あまりにも情報過多なことも原因なのかも知れません。
特に自然災害は風化=慣れが再度同じような被害を生んでしまいます。
小屋に戻り朝食。
天気は良くありませんが、継子岳周回へいざ、出発!
昨日同様にいろいろな花を見ながら歩きます。
途中目の前のハイマツの塊から雷鳥の親子が飛び出してきて驚きました。
あちらの方がもっと驚いたかも知れませんね。ごめんなさい。
子が猛スピードでどんどん親から離れて逃げてしまったので少し心配でした。
雨混じりの濃い霧でしたので、写真は全然ありません…
写真は針の山。ガスってるほうが雰囲気出ますね。
悪天候にもめげず、継子岳、摩利支天山としっかり山頂を踏んで二の池ヒュッテに戻りました。
時折空が青くなりかけたりもしたのですが、結局最後まで展望は得られず、登山の楽しみを感じるというよりは修行のような一日でした。
修行のようなと書きましたが、ここ御嶽山を中心地とする御嶽教は山岳信仰=修験道が発祥で「自然の中に神が宿る」という考えが大本にあります。
その考えが仏教や神道と結びついて修験道となりました、つまり御嶽山は修行の場なのです。今回もしっかり修行させていただきました。
ロープウェイで下って山の方を振り返るとなんとあれだけ上で視界が無かったのに、継子岳が見えています!
さっき苦労して歩いてきた山頂が見えるとなんとなくありがたい気持ちになってしまいます。アメとムチ。やるな御嶽山。
という感じで山に見送られ帰路につきました。
このような雨の日に限らず、山は基本的にはきつく辛い場所です。
不用意に山に入ってバテたり転んだりすれば場合によってはあっけなく死ねる場所です。また、時に試練のような災害をもたらします。
そうでなくても雨が降り、風が吹き、急な登りや危険な岩場が出てきたり、暑さ寒さに苦しめられたり。
やはり山登りはスポーツ、レジャー、遊びであると同時に修行的な要素は排除できないものだと思っています。
修験道というのは山で悟りを得ることが目的とするようですが、悟りなんて大それたものは僕自身は得てはいません。
しかし山からもらったものの考え方、気付き、生きるということへの思考。そんなものは自身の宝となっています。
他にも素晴らしい景色や達成感。動植物との出会い。仲間との大切な思い出など。
恩恵と呼べるものをたくさん与えてくれることも事実です。
そんなことを考えさせてくれる山、御嶽山。
山や自然としっかり向き合うには本当に良いところだと改めて感じた山でした。