ガイド再開!【岩手県4座トレーニング山行】その2
day1 兜明神岳
区界高原ウォーキングセンターから兜明神岳を目指します。
さて久々の登山。ソーシャルディスタンス、マスク着用、そんなことを意識しながら試し試し歩き始めました。
ものの数秒。暑さと息苦しさですぐにマスクをしながら歩くことは厳しいことが判明!
距離を取ることで対応するしかなさそうです。
舗装路を少し歩くとルートを示す表示が出てきました、この草原コースで登ります。
とにかく最初からペースを落とすこと、疲れる前に休憩すること、のどが渇く前に水分補給をすること。
山歩きの基本の基本に立ち返りながらゆっくりと進んでいきます。
休憩を挟んで45分でかぶと広場に到着。キャンプ場になっていて屋根の下のベンチとテーブルで休憩。
ここまで標高差200mほどをゆっくりと登りましたが、なんとなく以前の調子と大きな違いはなさそうで安心しました。
ベンチがあるとついついのんびりしてしまいそうですが、ちょうど良く暖まった体を冷やさないようにほどほどの休憩で兜明神岳山頂に向かいます。
ここから山頂までは地図上ではほんとにすぐなんですが……山頂はけっこうな岩場なんです。
遠くから見るとこの山頂の岩場が兜に見えるので兜明神岳という名前がついているとか。
明日向かう早池峰山には雲がかかっていました。
山頂の岩場に差し掛かったところでストックをその場に置いてもらい、久々の三点支持を意識してもらいながら岩場を登っていくと、展望も開けて山頂に到達です。
山頂の祠には熊野修験の護摩札が祀られていました。
奥にうっすら奥羽山脈が見えています。
岩場を慎重に下り、かぶと広場に戻るとまだまだ体力に余裕があるので、お隣の岩神山を目指すことに。
岩神山までは平たんな草原と森の中の道、林床を覗くとベニバナイチヤクソウがたくさん!今が見頃でした。
馬に「こ」をつけるのが、東北らしくていいですね。
この馬っこ広場周辺ではハナニガナがどっさり。
ハナニガナはこれまでガイド中にもほとんど名前を聞かれたこともない地味な花ですが一面埋め尽くすと壮観でした。
※バニバナイチヤクソウ、ハナニガナの写真は撮り忘れました。
かぶと広場から一度下って平坦になり最後に少し登って40分ほどで岩神山に到着。
山頂は登山道から少し離れていてわかり辛いところにあります。
三角点があって、ちゃんと山名板も。
山名、標高の下には「藪山登山家集団 TRIANGLE-POINT」との表記がありました。
もうそろそろ登山口かなーというところで咲きたてのとてもキレイなアザミが。
その場ですぐに名前は分かりませんでしたが、あとでここで調べたら分かりました。
https://www.kahaku.go.jp/research/db/botany/azami/index.html
アザミの名前を調べるのにとても便利なサイトです、日本にはなんと150種を超えるアザミがあります。
花の向き、葉の形、分布エリアなど絞っていくと、これは「マツシマアザミ」で確定。
ということで初日の行程無事終了です。
なだらかな草原、樹林、ちょっと急な登り、岩場、滑りそうな下り、いろいろな路面を歩いてトータル4時間。
トレーニング山行の初日にはちょうどよい山でした。
day2 早池峰山
午後から雨予報の二日目。岩手の名峰、花の名山「早池峰山」に挑みます。
ちなみに早池峰(はやちね)は「paha(東)ya(陸)chinika(脚)」というアイヌ語が語源との説が。
河原の坊からの車道歩きでスタート!幸い雨は降っていません。
登山口の小田越までは距離1.9km、標高差200m、コースタイム40分。
道路端にハクサンチドリが咲いているのには少し驚きました。あとコケイランも咲いていました。
小田越で自然保護監視員のおじさんと話したところ、この道路端の花々が路上駐車の影響でかなりダメージを受けたようです。
端の寄せて片輪で踏みつける土壌へのダメージの深刻ですが、タイヤについたタンポポやオオバコなどの種がかなり悪さをするとのこと。
外来種の駆除を丁寧にやりながら、7~8年の路上駐車禁止を経てようやく植物は戻りつつあるとのことでした。
ということで、小田越に車は停められません。河原の坊からの車道歩きも早池峰登山の一部と思って歩きましょう。
花も見れるし鳥もたくさん鳴いているし、とても良いウォーミングアップですので。
ということで小田越から登山開始です!
少し歩くとさっそくギンリョウソウがお出迎え、まだ出たばかりなのか綺麗な「銀」でした。
他にもオサバグサやズダヤクシュなど小さな白い花がちょこちょこと。
一合目が近づくと、ムラサキヤシオ、マルバシモツケ、カラマツソウ、ベニサラサドウダンなどが見られました。
30分で一合目に到着。
ここで森林限界から上に出ます。
樹林が途切れて前方が……見えません。
ガスガスです。そして少し風も出てきました。
ここから登山層の雰囲気がガラッと変わります。
ここが森林限界であると同時に岩の塊がゴロゴロしている道に変わります。
少し進むとさっそく高山の花、ミヤマオダマキが咲いていました。
水滴でガスが濃いのが分かりますね。
こんな低い標高(1400mほど)で高山帯の花が出てくるのは驚きです。森林限界が異常なほど低いということです。
ちなみに北海道の大雪山でも1500~1600mが森林限界。
緯度の問題だけではないのが分かります。
山の不思議です。
そこからほどなくして…でました!
ここ早池峰山だけで見れる花、ハヤチネウスユキソウです。
これはまだ開きはじめ。
この花は関東甲信の山では見れません。
こちらも早池峰山の特産種(固有種)です。
環境省レッドリストの絶滅危惧IA類に指定されています。
絶滅危惧IA類の定義は「ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの」です。
大切にしたいですね。
他にも
ムシトリスミレ
ミヤマハンショウズル
ミヤマキンバイ
これも早池峰山の特産種のミヤマヤマブキショウマ
終わりかけですがイワウメの群落などが出てくる出てくる。
今回はこの花が一番目立っていました。
ぱっと見はどこにでもありそうな花だけど実は本州ではこの辺りだけの花、ナンブイヌナズナ。
しっかり開いたハヤチネウスユキソウ!
ハシゴを登ると、雨風が強くなってきました。
この後もまた植生が変わり、多くの花が現れます。
ミネザクラ
チングルマ
キバナノコマノツメ
マイヅルソウ
ミヤマカラマツ
ハクサンチドリ
コバイケイソウ
イワカガミ
ショウジョウバカマ
エンレイソウ
…ミヤマオダマキ、ミヤマシオガマより上にミネザクラ?マイヅルソウ?ここはそんな山なんです。
ハシゴを登りしばらく進むと剣ヶ峰分岐、もう少しで山頂です、とてつもなく濃い霧が風でぐんぐん上がってきて体を濡らします。
良かった、そろそろ避難小屋だな。そんな気持ちで歩いていると…
!!!!
もう終わったかと思っていたヒメコザクラが登山道沿いで一株だけ発見できました!!
これも早池峰山の特産種。
今年は雪も少なかったと思うので、厳しいと思っていたのですが良かったです。
濃い霧と風でひどい写真ですが一応撮りました。
登山道から少し離れたところにウコンウツギも咲いてました。
これも本州だと青森と岩手でしか見られません。
写真では白っぽいですが濃い霧の中でも目に付く鬱金(ウコン)色でした。
そんなこんなで次々出てくる花を見ているうちに山頂避難小屋に到着。建物があるととても助かります。
山頂周辺はメチャクチャ霧…。
小屋内で衣類の濡れなどをチェックして、しっかりと行動食を補給して。
山頂も忘れずに踏んでいきましょう。
霧の中、早池峰神社、奉納された鉄剣などが雰囲気出してます。
ここの三角点は一等です。
神社の奥には十一面観音菩薩。
苦しんでいる人をすぐに見つけるためにたくさん顔があるのだとか。
さぁ。早池峰山の岩は大半が蛇紋岩と言って濡れるととても滑りやすい性質がある岩で形成され、下りでは特に注意が必要です。
気は抜けません!慎重になるべきはここから!
…と思ったら少し天候も回復して、苦も無く案外スルスルーっと下れました。
ある程度下ると天候はあまり悪くありませんでした。
上部では体感的にほとんど雨のような様相でしたが、すごく濃い霧だったようです。
振り返ると登りの時よりはだいぶ視界が良くなってました。
霧のラインがはっきりしています。
その後も順調そのもので山頂より2時間ほどで小田越に戻りました、ほぼコースタイム。
トレーニング山行の出来としては十分過ぎます!
既に河原の坊からだと合計で6時間ほど行動しています。
さてさてこれから本格的に雨の予報ですが…。
薬師岳…行きますか?
その3へ続きます。次で最後です。